和菓子街道 東海道 袋井

fukuroi-main-pic.JPG

東からも西からも27番目、東海道どまん中の袋井宿

 掛川の町を出ると東海道はやがて一号線と合流するが、その少し手前に十九首町という曰くありげな地名がある。街道から少し西に行った住宅街の中にある、平将門と18人の家臣の首塚「十九首塚」に由来する地名だ。比較的新しいとみられる首塚を拝んだ後は、再び東海道に戻る。

 しばらくは交通量の多い幹線道路沿いをゆくが、時折目にする街道松に心が安らぐ。更に先、掛川領の西端に当たる原川辺りの松並木は保存状態もよく、田畑が広がる周囲の光景と見事に溶け合っている。原川を出ると、いよいよ東海道の「どまん中」、袋井に入る。

 江戸から数えても京から数えても東海道27番目の宿場町に当たる袋井宿。袋井市に足を踏み入れた途端、いたる所に「どまん中」の文字を見かけるのはそのためだ。袋井東小学校の一角には、江戸日本橋から60里目に当たる久津部一里塚の南塚が復元されているが、この小学校にも「どまんなか小学校」と書かれた看板が掲げられている。

 そもそも、袋井宿の規模は比較的小さく、町並みの長さもわずか五町(約545m)だったという。袋井の地名は、丘に囲まれた地形が袋状だったことと、その盆地内に泉が湧いていたことからつけられたというが、昔はおそらく盆地に田畑が広がる小さな村だったのだろう。丸凧や花ござ以外、宿場の名物もこれといってなかったようである。

 とりもなおさず、かつての宿場町としての袋井が今の時代に誇るべきは、必然的に「どまん中」なのである。もっとも、産業的にはマスクメロンの生産日本一を誇っており、宿場町の歴史に関係ない部分で一大農業都市として充分活気付いているのだが。

 そして、やはり「どまん中」を名前に冠しているのが「どまん中茶屋」、広重が描いた『袋井出茶屋之図』をモデルに、袋井宿の東口に建てられた休憩処だ。囲炉裏を囲むように木の椅子が設えられた茶屋内には、袋井宿や東海道に関連した書物や土産物などが所狭しと置かれている。

 勧められるままにお茶やらお菓子やらを頂きながら、店番をする地元の古老と話をしていると、この先まだまだ歩く道があるのだということをつい失念してしまう。文字通り、道はまだ半ばなのだ。ちなみに、どまん中茶屋名物の「どまん中茶屋まんじゅう」(藤花堂製)は6個300円。生地に混ぜ込んだ味噌が所々に浮き出した皮で、餡を包んだ饅頭だ。

 どまん中茶屋を出ると、袋井の町に入る。町中の桶屋も服屋も、みんな「東海道どまんなか」の木板を掲げている。菓子屋脇にも、「どまんなか饅頭」と書かれたのぼりが出ている。

 そんな袋井の町を散策しながら、東本陣跡、どまんなか公園を経て進むと、袋井宿の西の外れに当たる御幸橋に至る。橋の袂には高札場が復元されており、ここで袋井宿に別れを告げる。この先、武田信玄と徳川家康が戦った木原畷の古戦場跡を過ぎると、次の見附宿までは一号線に着かず離れずしながらゆくことになる。

hiroshige-fukuroi.jpg

domannaka-chaya.jpg

comannaka-chaya-manju.JPG

gekkaen-domannaka-manju.JPGこちらは袋井駅前の月花園の「どまん中まんじゅう」。白が酒まん、茶色がみそまんだ

【追記】(2009年02月12日)
  上記の「どまん中茶屋まんじゅう」は、現在はどまん中茶屋では販売されていない。この饅頭は元々、市内の藤花堂製の「味噌饅頭」という商品で、どまん
 中茶屋用にラベルだけ別に作っていたものだったが、配達要員の不足から、どまん中茶屋に配達できなくなってしまったのだそう。「味噌饅頭」自体は、藤花
 堂で現在も販売。藤花堂・・・静岡県袋井市久能2545-4、電話:0538-42-3956 1個70円~。

 ・五太夫きくや「北の丸」「村一つ」他

      東海道どまん中宿の老舗菓子屋 → click!

masakado-mound.jpg

kago.jpg
kutsube-milestone.jpg

to-yusanji.jpg
domannakachaya-inside.jpg

east-elementary-school.jpg
honjin-gate.jpg

miyuki-bridge.jpg
fukuroi-westend.jpg

west-elementary-school.jpg
kihara-milestone.jpg

kone-shrine.jpg

遠州三山(ご利益菓子)巡り

kasuisai-yurien.JPG 袋井の町を散策していると何度となく出逢うのが「油山寺」と記された道標だ。法多山尊永寺、萬松山可睡斎と並んで遠州三山と呼ばれる医王山油山寺への道筋を示すものである。実は袋井は、別名「宗教町」とも呼ばれるほど社寺の多い街なのだ。

 明治時代の廃仏毀釈で数は随分減ったものの、かつてこの地方の中心地だった森町から袋井にかけて、現在も多数の社寺が残されている。その中でも、遠州三山は歴史も古く、全国的に知られた名刹である。いずれも袋井駅からバスで20分ほど行ったところにあり、東海道から歩いて行くには少々遠い。しかし、『和菓子街道』としてはこの遠州三山の名物菓子もとりあげておきたいところだ。

(お菓子の写真はクリックすると大きくなります)                        可睡斎の百合園

法多山

 「法多山」という山号で呼び親しまれている尊永寺は、神亀2年(725)、行基による創建の古刹だ。本尊の正観世音菩薩は厄除け観音として広く知られている。この法多山名物が「厄よけだんご」と呼ばれる串団子である。

 江戸の昔、法多山では毎年正月、江戸幕府の武運長久、天下泰平、五穀成就の祈祷をし、その際に地元の名産品を献上する習わしがあった。十三代将軍家定の頃のある年、門前に住む寺士八左エ門という男が考案した団子を献上すると、将軍家から「くし団子」の名を賜ったという。

 当初はお殿様だけの特権だったこの団子も、時代が進むにつれて観世音名物として庶民の口にも入るようになり、いつしか厄除け観音にちなんで「厄よけだんご」と呼ばれるようになった。

 「厄よけだんご」は細い串に棒状の団子が刺さったもので、1カサ5串になっている。一般の団子が1串5玉で頭・首・手・足・胴という人間の5体を表しているのに対し、この「厄よけだんご」は5串で5体を表しているのだという。この点は、正統派みたらし団子と同じだ。

 昔は門前に15軒ほどの団子屋があり、それぞれの店で団子を作っては売っていたのだが、昭和40年頃に厄よけだんご組合が発足。今では境内の茶店のみでの販売となっている。茶店では2カサ200円でお茶と共に頂くことができる。土産用は1箱6カサ600円~。縁日には茶だんごも登場する。

hattasan.JPG

hattasan-yakuyokedango.JPG

可睡斎

 続いて、可睡斎の「ぼたん餅」を紹介しよう。応永8年(1401)に恕仲天闇禅師が開基した曹洞宗・可睡斎は、日本唯一の火防霊山・秋葉信仰の総本山として信仰を集めている。「秋葉さん」とも呼ばれ、特に静岡や愛知には秋葉常夜灯が多く見られる。また、東京秋葉原の地名も、この秋葉さんに由来しているのだとか。

 可睡斎という寺名がつけられた経緯には、徳川家康が一枚噛んでいるらしい。幼少の頃、今川家の人質にとられていた家康は、この寺の11代住職・等膳和尚に救われたことがあった。後に浜松城主となった家康は、その時の恩に報いるために和尚を城に招くのだが、なんと和尚はその席上で居眠りを始めてしまった。

 その様子を見た家康は「和尚我を見ること愛児の如し、故に安心して眠る。我その親密の情を喜ぶ。和尚睡可し(ねむるべし)」と語った。以来、和尚の寺は可睡斎と呼ばれるようになったのだという。天下人・家康の寛大さを物語る逸話だ。

 この可睡斎門前のみやげ物屋「瀬川屋」で売られているのが「ぼたん餅」である。粗潰しのもち米で作った餅を漉し餡で包んだもので、4個入300円~。店内でも頂くことができる。餅はうっすらと桃色に染められているが、これは可睡斎が牡丹の名所として知られているため、そのの花を模しているのだという。

 牡丹のほかにも、可睡斎は夏の鷺草、秋の紅葉と、四季折々の花や樹を楽しむことができるため、「花の寺」とも呼ばれている。この「袋井」のページ扉写真も、可睡斎横の百合園での光景だ。

 ちなみに、右下の写真のお菓子は、可睡斎境内の売店で販売されている「火防まんじゅう」。遠州地方ではお馴染みのいわゆるみそまんじゅうだ。

kasuisai.JPG

kasuisai-botanmochi.JPG

kasuisai-kaboumanju.JPG

油山寺

 最後に油山寺である。法多山同様、行基によって大宝元年(701)に開山された真言宗の古刹で、本尊の薬師如来は秘仏だ。寺名の由来は、山中に油が湧き出したという言い伝えによるもので、土地の人々は「あぶら山」と呼び慣わしていたという。孝謙天皇が眼病全快を祈願して境内にある「るりの滝」の霊水で眼を洗ったところ全快したとの伝承があり、以来、「目の霊山」として信仰されるようになった。

 鬱蒼とした木立に包まれた境内は広く、山寺らしく、本堂にたどり着くまでにいくつもの石段を登っていく。本堂手前の三重塔は、元は源頼朝が眼病治癒のお礼に建立したもの。後に戦火に焼けたため、慶長16年(1611)に再建し、現在は国の重要文化財に指定されている。

 山門手前にある休憩処「一休庵」で売られているのが、油山寺名物の「ごりやくまんじゅう」(8個入800円)だ。目の霊山ということで、漉し餡入りの酒饅頭の表面に「め」の字の焼印が押されている。

 袋井に来たのであればちょっと足を伸ばして遠州三山巡りをし、それぞれの名物菓子を手に入れるのも一興だ。しかし、名物菓子はあくまで余興。各寺の本尊に参り、旅の無事など諸々に感謝した上で頂きたいものである。

yusanji.jpg

yusanji-goriyakumanju.JPG