和菓子街道/東海道 岡部

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いにしえから息づいてきた鄙の宿、岡部

 宇津ノ谷峠を背にした岡部は、鎌倉後期の『東鑑』にも描かれている古い宿場町だ。宇津ノ谷峠から東海道と分岐する在原業平ゆかりの蔦の細道や、平安時代の美女・小野小町が旅窶れした己の姿を映し見て嘆いたという姿見の橋など、鎌倉以前の人々の足跡も多く残されている。

 岡部は宿場としての規模は小さく、大名行列などが泊まる際には近隣の宿場から夜具を借り受けなければならないほどだったという。大井川が増水で川止めになると、手前の島田や藤枝の旅籠が満員になったため、川からは遥かに離れた岡部の宿にも泊まる客が増えたようだ。

しかし、そういうことでもなければ、岡部は山間にひっそりと横たわる静かな集落だった。そして今も、のどかな家並みが続く岡部は、ここだけ特別な空気が流れているのかと思わせるような鄙の町だ。

 大きな旅籠が少なかった岡部の中でも比較的規模が大きかった柏屋(かしばや)は、平成10年に国の登録有形文化財に指定され、現在は資料館として一般に開放されている。

 それ以前、柏屋山内家の老婦人がひとりで暮らしていた頃には、天保7年(1836)築のこの屋敷は手入れもされることがほとんどなく、老朽化が進んでいた。なんとか貴重な文化財を残したいという岡部町の町長が、手入れだけでもさせて欲しいと何度も説得に当たったが、老婦人は頑として譲らなかったという。

 時は流れて、老婦人も他界。住む人がいなくなり、益々荒れるばかりの屋敷を見かねた町長は、東京に住む身内と交渉し、ようやく町で敷地と家屋を買い取って修繕することができた。買取や修改築にかかった費用は数億円とも。古いだけの建物に町のお金を注ぎ込むのかと、当初は町民の多くが町長に反対していた。町長自身、町長生命を賭けた投資だった。

 しかし、蓋を開けてみたら、朽ちかけていた柏屋は岡部が誇る観光名所に変貌していた。大型バスでやって来る観光客の数も年々増えている。今ではもちろん、町長の英断に文句を言う町民はいないどころか、町を挙げて柏屋をはじめとする町内の文化財を維持することに力を注いでいるという。

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その他のおいしい立ち寄り情報

小松や
  菓子: 花餅(立石神社祭中のみ1個105円、)他
  住所: 静岡県志太郡岡部町岡部6-39
  電話: 054-667-0074
  営業時間: 9:30~19:30
  定休日: 9:30~19:30

 毎年、7月下旬に行なわれる立石神社祭の時にだけ、岡部のお菓子屋さんに並ぶ「花餅」。その名の通り、紅と緑の色づけたその姿は、ぱっと花が咲いたように可愛らしい。紅は魔除け、緑は生命力をそれぞれ象徴しており、花餅を食べると無病息災、五穀豊穣といったご利益があると言われている。いつの頃から作られるようになったのかは定かではないが、岡部では昔から、このお祭りにはこのお餅、と決まっている。

 餅皮は、もち米を撞いて作られる餅ではなく、どちらかというと伊賀餅の皮のよう。伊賀餅はうるち米ともち米の粉を練った生地で餡を包んで蒸し上るが、上新粉を使っているという花餅の滑らかな口当たりも、それと非常によく似ている。中の餡はさらっとした漉し餡だ。

 夏場限定だから、ちょっと冷やして頂くと、つるんとした花餅は一層おいしく感じられる(我流です)。ただし、冷やしすぎると固くなってしまうのでご注意を。

 花餅は、三代続いている「小松や」をはじめ、町内の和菓子屋3軒で作られる。地域限定、期間限定のため、確実に手に入れたい人は予約することをお勧めする。

(お菓子の写真をクリックすると大きくなります)

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和風れすとらん 一祥庵
  料理: 四季の小鉢膳 (1890円)、とろろ汁膳(1890円)他
  住所: 静岡県志太郡岡部町岡部817 大旅籠柏屋歴史資料館内
  電話: 054-667-5215
  営業時間: 11:00~14:00(ランチ)
          14:00~16:30(喫茶)
          17:00~21:00(夜は要予約)
  定休日: 月曜日(祝日の場合は翌火曜日)
  URL: http://www.geocities.jp/issyouan5215/

 柏屋の敷地内にある江戸時代の蔵を改装した和食処、一祥庵。静岡市内にある和食料理屋の姉妹店として出発した店だが、当初、ご主人はこの店の出店に乗り気ではなかったという。「岡部町さんから、ここにお店を出したいという相談を受けまして、とりあえずどんな場所か見るだけでも見てみようと、私が視察に来たのです」と語るのは、一祥庵の女将さんだ。

 大きな息子さんがいらっしゃるとは思えないほど若々しく、チャーミングな女将さんは、この蔵に一目惚れ。ご主人にも出店を強く薦めたという。ところが、ご主人はなかなか耳を傾けてくれない。そこで女将さん、強行に出た。ほとんど独断で岡部町と話をまとめ、出店までこぎつけてしまったのだ。そのおっとりとした風貌からは想像もつかない判断力には、感服する。

 女将さんが見込んだ通り、店はすぐに評判になり、今ではご主人も本店以上にこの鄙の蔵造りの店に夢中だという。観光スポットの中にあるとはいえ、料理の中身は一流料亭のそれ。人気の「四季の小鉢膳」は、炊き合わせや天麩羅などの旬の食材を盛り込んだ彩も鮮やかな一膳だ。

 特に、大豆の甘みが残るおいしい手作り豆腐は是非、味わって頂きたい。『東海道中膝栗毛』の中で「豆腐なるおかべの宿につきてげりあしに出来たる豆をつぶして」という戯歌が歌われている。おかべ(御壁)とは、豆腐を白壁に例えた女詞で、この歌では岡部宿にかけている。そんなわけで、岡部豆腐はこのお膳の大トリなのだ。

(料理の写真をクリックすると大きくなります)

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