和菓子街道 東海道 沼津

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駿河湾と千本松原、干物と猫の街、沼津

 三島と沼津の間の東海道は、井上靖の自伝的小説『あすなろ物語』の中では、主人公・浩作(井上自身の投影)の通学路として登場する。思春期の浩作を見守った道は、当時とは随分赴きを変えているかもしれない。

 西伊豆への入口に当たる沼津。駿河湾に面したこの街は古くから漁業が盛んで、現在でもアジの干物の生産量は日本一である。開いた魚が天日干しにされている光景はのどかで、干物の街に来たのだなと実感する。街を歩いていると、そこかしこに猫のオブジェが。干物を狙うドラたちなのだろうか。いや、オブジェだけでなく、本物の猫も随分たくさんこの街で暮らしているようだ。暢気そうに昼寝する猫たちの様子を見ていだけで、沼津散策が一層楽しいものになる。

 元禄時代(1688~1704)には78軒もの旅籠があったという大宿場・沼津は、五万石の城下町でもあった。旧道風に整備された川廓通に入ってしばらく行くと、右手に階段が表れる。上っていくと、ちょっとした公園になっているのだが、ここが水野氏の居城跡である。本丸跡の石碑が残るのみで、ここに城があったことを想像するのは難しい。

 宿場内をジグザグに進んで乗運寺前に出る。東海道はここから西に伸びているが、進路を南にとって海を目指すと、やがて果てしなく続く松林に出る。鎌倉時代の武田・北条の戦いで当初あった松原が切り倒され、浜辺の住民達が潮風の害に苦しんでいたのを見かねた乗運寺の開祖・増誉上人が松原の復元を発願し、阿弥陀経を唱えながら1本1本、松を植えていった。

 千本で満願、それが今日では景勝地として名高い千本松原の基礎となった。駿河湾沿いに田子の浦まで続くという松原。次の原宿までの味気ないアスファルト舗装の1本道を行くより、この松原の中を海岸沿いに歩く旅人は少なくないようだ。

 戦災で街の大方が焼けてしまったという沼津には、歴史的建造物などもほとんど残っていない。宿場時代を偲ばせるのは綴れ折の街道筋だけで、老舗という老舗もない。沼津土産と言えば干物をはじめとする海産物だが、ここではあえて、街の中でも比較的古くから続いている和菓子屋を2軒、紹介しておきたい。(下の「その他のおいしい立ち寄り情報」参照)

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その他のおいしい立ち寄り情報

花見煎餅
  菓子: 手焼煎餅(各種1枚105円~)、桜あられ(1袋83g入320円)他
  住所: 静岡県沼津市下本町28
  電話: 055-963-0873
  営業時間: 9:00~19:00(日曜・祝日は~18:00)
  定休日: 第2日曜日
  URL: http://boat.zero.ad.jp/hanami/

 乗運寺の手前、沼津宿内をジグザグに行く街道の最後の曲がり角の一角に建つ花見煎餅。明治40年(1907)の創業以来、手焼を貫いているというこの店は、3人も入れば身動きがとれないくらいの小さな店内いっぱいに、煎餅やあられ、おかきが所狭しと置かれている。

 スタンダードま丸型の煎餅や、かわいらしい花型のもの、ざらめのついた甘いもの、醤油辛いもの、サラダ風味など「今時」の味のものまで、その種類はざっと100余り。目移りしてしまう品揃えだ。

 「今ではこんな風に店の奥で手焼してる店なんてほとんどありませんからねぇ。お米の風味を味わって下さると嬉しいです」と、お店の大女将。米やもち米が原料のお煎餅だから、旅の途中の腹ごなしにもなる。日保ちする上、軽いのでちょっとしたお土産にも気が利いているのでは。


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いせや本店
  菓子: 平作最中(137円)、沼津五万石(116円)他
  住所: 静岡県沼津市幸町2番地
  電話: 055-962-0222
  営業時間: 9:00~19:00(日曜・祝日は~18:00)
  定休日: 毎月第3水曜日、元旦
  URL: http://www.heisaku.com/index.html

 昭和8年(1933)創業。初代で経営権が移り、現在は最初から数えて三代目が経営。大正から昭和にかけて、神奈川を中心に古くからあった伊勢屋という和菓子屋から多くの職人が暖簾分けした。現在も東京、神奈川辺りには伊勢屋の屋号を持つ菓子店が多いという。この沼津もそんな暖簾分けによって生まれた一軒だ。

 いせや名物は、平作最中。平作とは、歌舞伎などで有名な『伊賀越道中
双六』の登場人物。自害してまで娘婿の仇討ちを助ける老人だ。実話を基にした物語だが、平作は創作上の人物。しかし、沼津の人々は、その義侠心に感銘を受け、平作の茶屋があったとされる場所に祠を建てて祀ったのだという。

 この平作に因んだ最中は、いせやの創業当時から作られているそう。最中の皮は、平作が被っていた笠を模した形になっている。当初は笠の先がつんと立った円錐形だったが、立体的すぎて皮が壊れやすいという理由から、戦後は今のように笠の頭が平坦なデザインに変更されたという。 中の餡は、和三盆糖で甘みをつけた粒餡だ。

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