和菓子街道 伊勢街道 上野

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さも長い、伊勢上野の宿場通り

 伊勢上野宿は、宿内が約2キロにも及ぶ長い宿場町だった。俗に「上野のふんどし町」と称されるほどだったとか。しかし、寛政9年(1797)に編纂された『伊勢参宮名所図会』にも、「上野村―宿駅也」と記されているだけで、とりわけ特徴があったわけでもなさそうだ。かつては青物屋や菓子屋もあったというが、今はほとんど店もなく、通りはひっそりとしている。それでも、ところどころに虫籠窓や蔵のある家が残っており、風情を保っている。

 明治2年(1869)の明治天皇東行の際、御小休処に当てられた大庄屋・秋田家の跡地は、今は公民館になっている。その斜向かいに建つ旧家の方にご案内頂いて、家の中を見せて頂くことができた。今はサッシの戸に変えられているが、昔使われていた玄関の扉は、軸を中心に回転する回転扉になっていた(玄関内側に保存されている)。縦横2メートル以上の大きな扉で、かすかに残る赤い塗りがどこか艶めいて見える。昔は旅籠や遊郭も営んでいたのだという。

 ここから少し先には、「弘法井戸」。元和年間(1615~1623)頃から確認されている古井戸だ。井戸口には板がはめ込まれ、それを外すとまるで地下室の入口のような切り口があり、中に黒く冷たい水が湛えられている。桶も用意されているということは、この水は折々使われているのだろう。

 弘法井戸のすぐ先で道は枡形になっている。この辺りが上野宿の中心地だったらしく、本陣(丸屋)や問屋(荒井屋)、高札場もこの辺りに集中していたという。

 また、街道西側には「城山」と呼ばれる小高い山があるが、これは永禄11年(1568)に織田信長の弟・信包が築城した上野城の跡だ。しかし、この城が使われた期間は短く、天正13年(1585)に分部光嘉(伊勢上野藩初代藩主)が入城するも、その子光信が元和5年(1619)に近江大溝(現・高島)に移封させられると同時に、廃城となってしまった。

 長いはずの上野宿もいつの間にか行き過ぎ、ひたすら真っ直ぐ進む。途中、23号線を斜めに横切るも、旧道そのものは果てしないほど真っ直なのだ。上野城時代に処刑された武士の魂を弔うために建てられたという高山地蔵の祠を確認して、更に進むと、急に目の前に気になる看板が現れる。「痔神社」!こんなおかしな名前の神社なら、寄らねばなるまい…。

 インパクトのあるネーミングだが、元々は「地神社」といい、この土地の地神を祀っていたらしい。それが、明治の頃には「痔神社」と呼ばれるようになったのだという。小さな祠だが、その方面でお悩みの方々の間では全国的に有名らしく、「お礼参り」に訪れる人も少なくないのだそう。

 付近を清掃していた地元の方のお話によると、近くの三重大学病院に15年通院して治らなかったものが、痔神社に祈願したところたちどころに治ってしまったと喜んでいた人もいたのだとか。なんとも、霊験あらたかな神様ではないか。

 あくまで予防のために立ち寄った痔神社をあとにし、街道を行く。要所要所に地蔵堂や神社などがある他には、特段見るべきものもない栗真小川地域を過ぎ去り、部分的に消失した街道を埋め合わせるように先を行く。すると、やがて伊勢街道は、先に甕釜冠地蔵堂の所で別れた巡礼道と合流する。合流地点の目印は、天保10年(1839)年建立の常夜灯、街道の名残松、比較的新しい道標だ。

 この先、自然石を利用して造られた嘉永4年(1851)の常夜灯を過ぎ、道なりに進んで23号線を跨いで道を右にとる。すると、目の前には姿の美しい木造の橋が。江戸に上る津藩主の見送りもこの橋までとされたことから、江戸橋と名付けられたという。

 橋を渡りきった所には、安永6年(1777)に建てられた常夜灯と、明治22年(1889)に再建されたという高田本山道の道標がある。この角を右折すれば、東海道・関宿へと通じる伊勢別街道。左折すれば、伊勢方面の伊勢街道だ。京方面から伊勢を目指す人は、伊勢別街道を下ってきて、ここ江戸橋で伊勢街道に合流したのだ。

 今回の旅はここまでとし、次の旅はここからとしよう。朝日の中に浮ぶ木橋の袂から出発するのも、気持ちがよさそうだ。

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