その他のおいしい立ち寄り情報
玉喜亭
料理: 懐石コース (昼:4200円~、夜:5250円~)
その手は桑名のハマグリコース(6300円~)他
宿泊: 素泊まり (4800円~)、一泊朝食付き (5500円~、一泊二食付き8000円~)
住所: 三重県桑名市安永362
電話: 0594-22-0158
営業時間: 11:00~22:00
定休日: 年末年始
URL: http://www.tamakitei.com
桑名宿を出外れ、矢田の立て場の火の見櫓の角を右折して20分ほど行くと、旧道は安永の集落へと吸い込まれていく。桑名七里の渡しから約一里(3.9キロ)。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』の中で、「旅人を茶屋の暖簾に招かせて、のぼりくだりをまち屋川かな」と紹介されている町屋川(員弁川)の手前にあり、旅人が「ちょいと一休み」と思う頃合の所に設けられた立て場だ。
かつてこの辺りには茶屋が連なり、家々でこの地の名物「安永餅」を焼いては旅人をもてなしていた。旧道沿いには今も、当時のままの佇まいの古い家が建っている。街道沿いの茶店ならではの造りで、道に面した部分は一階建て、奥の部分は二階建てになっている。目の前を通行する大名行列に遠慮したためだ。また、江戸時代の建物の横には、明治時代に建て増しされたという別の二階家も並んでいる。道路よりも一段下がった所に玄関があるが、これは昔の道路が建物と同じ高さにあったことを示している(道は年々土を盛られ、舗装され、今の高さになった)。
中を覗くと、おくどさん(竃)や安永餅を焼くための丸い鉄板、杵と臼などがそのまま残されている。台所の高い天井に取り付けられた明かり取りの窓からは、柔らかな日の光が差し込んでくる。「安永餅」と書かれた木看板や番台、旅人が腰掛けたであろう床机もそのまま。目を瞑れば、安永餅を食べながら旅の疲れを癒した旅人たちの会話が聞こえてきそうだ。
ここは、玉喜亭。江戸時代には安永餅を食べさせる茶店だったという、創業200年余りの老舗料理旅館だ。江戸時代のままの母屋の道を挟んだ向かいには現在使用している建物があるのだが、その姿は前面に生い茂る見事な藤棚に隠されて見ることができない。5月には美しい濃紫の花を咲かせる砂ずりの長藤は、創業以来の玉喜亭の名物で、ゆえに安永を「藤の里」とも呼ぶのだとか。往時の旅人は、この藤棚をよしず代わりにして涼み、池に映る藤に感嘆の声を漏らしたのだろうか。
藤棚の奥を進むと、旅館として使われている建物とは別の、茶室風の離れに案内された。お軸のかけられた床の間つきの部屋で供されたのは、焼き蛤に蛤鍋、蛤の天婦羅に蛤時雨の茶漬けと、蛤尽くしの料理。蛤は全て、地のものを使用。その昔、桑名近郊の茶店では、東海道の松並木の下に落ちる松葉や松かさを集めて蛤を焼いたという。皿に松葉を敷いて焼き蛤を出すという趣向が、その風情を演出してくれている。料理を頂きながら、七代目の女将さんの昔語りに耳を傾けた。
安永の街道沿いに数軒あったという茶店は、現在は駅前にある柏屋や安永餅老舗のように移転して安永餅を作り続けている店と、料理旅館へと転身した店とに別れた。ご近所の「すし清」同様、玉喜亭も後者の部類に入る。
「安永餅の茶店と言っても、安永餅ばかりを出していたわけではなく、酒や肴も出していたのだと思います。何件かあった茶店の中でも、料理が得意だった店が、うちのような料理屋になったのではないでしょうか」
と、気さくな女将さんは語る。玉喜亭が料理旅館になったのは戦後のことで、それ以前に安永餅作りをしていたという祖母の話を女将さんもよく覚えているという。
「来る日も来る日も、もち米を水に浸して、搗いて、餡を詰めて焼いて…それはもう大変な作業だったそうですよ。料理屋の方がよっぽど楽だと、おばあさんがよく言っていました(笑)」(女将さん)
終戦後、東京にオリンピックを招致するため、各地のいわゆる“赤線”に規制が入り、料理屋で酒を出すことが禁止されるという時代があった。しかし、旅館なら酒を出せることになっていたため、玉喜亭も旅館に変えたのだという。
玉喜亭をはじめ、普段は静かな安永の料理旅館も、鈴鹿のF1シーズンともなると、宿泊客でごった返す。そんな時は、町屋川越えに備える旅人で溢れた頃の立て場の喧騒が蘇ったように賑やかになる。玉喜亭は、200年間変わることなく旅人を迎え続けている。
(料理の写真はクリックすると大きくなります)
山月
料理: 蛤会席料理 (6000円~)他
※料金には奉仕料と税が加算されます。
※2名~、要予約。
宿泊: 1泊2食付 (13000円~)
住所: 三重県桑名市船馬町32
電話: 0594-22-3451
営業時間: 11:00~21:00 (予約時に相談)
定休日: 不定休
海路による桑名の入口・七里の渡しの船着場近くに建つ山月は、明治38年(1905)創業の料理旅館だ。建物は、江戸時代には脇本陣の中でも最も規模の大きかった「駿河屋」の跡地にあるが、駿河屋とは別の家柄である。一時途絶えていた料理旅館は、昭和に入ってから再開、現在に至る。
背の高いコンクリート建てが目につくが、本館は古い木造建築。趣のある玄関を入っていくと、女将さんがにこやかに迎えてくれた。部屋まで案内される途中、階段脇に展示されている石取り祭りの山車の模型にしばし見とれた。模型と言っても、人の背丈ほどあり、黒く塗りを施した立派なものだ。古いもので、現在では修繕も難しいという。
通された二階の部屋は、長良・揖斐の両大川を縦に眺めることができる座敷だった。山月では、各部屋から大川に臨んでおり、角度によっては七里の渡し跡の櫓も見ることができる。
そして、この実に贅沢な演出の中で頂くのは、名物の蛤料理。会席仕立てで、和え物からおすまし、焼き物まで、蛤尽くしだ。最後の〆はもちろん、蛤時雨の茶漬け。お出汁をさして、さらさらっと頂く。料理と景色を堪能し、大河の流れのごとく緩やかなひと時を過ごすことができる。
(料理の写真をクリックすると大きくなります)
歌行燈
料理: 名代・歌行燈(1260円~)、歌行燈御膳(1449円)
蛤歌行燈御膳(1764円)、四季懐石・七里の渡し(5250円~)他
住所: 三重県桑名市江戸町10
電話: 0594-22-1118
営業時間: 11:00~21:00
定休日: なし
URL: http://www.utaandon.co.jp/
七里の渡しから桑名の中心部に向けて伸びる旧東海道沿いに、ほのかな明かりをともした掛行燈がかけられた店がある。行燈に浮かぶ店の名前は、その名も「歌行燈」。かつては廓町だったこの辺りのことを、土地の人は今でも「花町」と呼ぶが、歌行燈の店構えにも、その名残りが感じられる。建物は古く、昔ながらの入れ込み小座敷がなんとも粋だ。
歌行燈は元々、「志満や」の名で明治10年(1877)に店を開いたうどん屋である。明治の文豪・泉鏡花の小説『歌行燈』の中に描かれた“饂飩屋”のモデルとなった店だ。『歌行燈』は、明治42年(1909)の伊勢路・桑名を舞台に、能芸道の中に人の生き様を描いた物語で、舞台化、映画化もされた秀作だ。能に精通した泉鏡花らしい作品とも言えるこの小説は、特に男女の精神的描写は実に艶やかで、熱情をたぶんにはらんでいる。そんな中でも、唐辛子を利かせた熱いうどんをすする“饂飩屋”のくだりは、心の内側に沁みる哀感を帯びた名場面と言えるのではなかろうか。
そして、志満やがこの名作に因んで「歌行燈」と名を変えたのは昭和55年のこと。泉鏡花の関係者にも許可をとっているという。明治の創業以来、手延べの釜揚げうどんにこだわり続けるこの店も、現当主の横井敬之氏で四代目。本店は昔ながらの佇まいだが、企業としては大きく、東京新宿をはじめとする関東圏や、海外にも出店。歌行燈以外にも、「やじろべえ」「石焼ひと口おちょぼ餃子」「豆富料理のグルメダイニングゆう悠」「ヘルシーな膳処てん心」といったチェーン店を展開している。
店名と同じ名物「名代・歌行燈」は、三代目の横井禮一氏が考案によるもので、うどんの醍醐味を満喫させてくれると評判だ。かつお出汁のきいた熱いつゆを一口すすってから、葱や海苔、胡麻、大根おろし、山椒などの薬味を好みで入れて、コシの強い太打ち麺をつけて頂く。もちろん、小説『歌行燈』よろしく唐辛子をかけて、より“熱く”してもいいだろう。
この「名代・歌行燈」にはアレンジ・メニューがいくつかあるが、ここは桑名、やはり「蛤歌行燈御膳」がお薦めだ。釜揚げうどんには大きな粒の蛤がのっているほか、蛤の天婦羅や茶碗蒸しなどがついてくる。蛤は冷凍物は一切使用していないため、釜揚げうどんの湯の中には蛤のおいしい出汁が出ている。うどんを食べ終わった後は、つゆにこの蛤出汁入りの湯を加えて、蕎麦湯のごとく味わうのが歌行燈流だ。
桑名時雨紀行
桑名沖でとれる蛤は、味に優れている上、多くの薬効があるとして、昔から重宝されてきた。桑名市文化財に指定されている『久波奈名所図会』にも、蛤は「五臓を潤し、消渇を止め、胃を開き、老癖を治し、婦人血塊に煮て食べうべし」などと記されている。織田信長や宮中、徳川家康をはじめとする歴代将軍にも献上されたと伝えられ、現在でも桑名は日本随一の蛤産地として知られている。
そんな桑名には焼き蛤を出す店が多いが、江戸時代の焼き蛤の本場は、桑名よりもう少し街道を四日市方面に進んだ富田や小向の立て場だった。富田一帯の焼き蛤については、『東海道名所図会』や『東海道中膝栗毛』、『広重日記』などでも紹介されている。呑み助の旅人にとっては特に、この上ない肴として愛されていたようだ。
では桑名の名物はというと、江戸時代から時雨蛤と決まっている。“桑名の殿様志ぐれで茶々漬”と俗謡にも謡われた時雨蛤は、江戸時代にその製法が確立した伝統的な保存食だ。尾張の国の水谷九郎兵衛が桑名に移り住み、関が原の戦いの時に大垣城で家康に蛤を醤油で煮たものを献上したという逸話もある。
時雨蛤は当初、煮蛤と呼ばれ、焼き蛤同様、街道沿いの茶店で売られていた。その場で焼かれて食された焼き蛤に対し、煮蛤は土産用だったようだ。煮蛤よりも風情ある時雨蛤と名づけられたのは元禄(1688~1703)から宝永(1704~1710)の頃のこと。
蛤業者の依頼によって、時の俳人・佐々部?山を通じて、松尾芭蕉の高弟・各務支考が考案したと言われている。由来は、時雨の降る10月頃から作り始める産物であるため、だとか。また、命名を依頼した蛤業者こそ、「貝新水谷新左衛門」初代・貝屋新左衛門であると伝えられている。
よく、時雨煮と佃煮は混同されがちだが、双方似て非なる物。飴をくわえて照りを出す佃煮は、べっとり、こってりとしているのが特徴で、どちらかというと“庶民的”な味ということになっている。対する時雨煮は、桑名のお殿様の好物だっただけあり、コクがありながらも上品、香り豊かに炊き上げてある。
時雨蛤の作り方は、店によって若干の差はあるが、基本的には浮かし煮(または浮き煮)という独特の製法によって炊かれる。生きたままの新鮮な蛤を粒選りし、ひとつひとつ手剥きして洗って砂を落としてから沸騰した湯で煮る。ここで、風味付けに刻み生姜を入れる。煮終わったら、煮汁を完全に切った上で、桑名特産の底引き溜り醤油(生引溜)で炊いていく。この時の火加減によって、味や堅さが決まるといってよい。
沸騰した醤油に入れてしばらくすると、蛤は表面に浮き上がってくる。これを杓子で叩いては鍋底に沈める。蛤はじきに再び浮かんでくるので、繰り返し沈める。頃良く煮たところで蛤をすくい取り、ざるに広げて冷ませば完成だ。
土産物としても人気が高いが、もちろん、地元の人たちの日常的な食膳にも時雨蛤やその他の時雨煮(アサリ、昆布など)は上る。桑名駅付近には時雨煮の老舗が多いが、店によって独自の味があり、甘め、辛めなど、地元の人たちにはそれぞれの好みでご贔屓を決めているようだ。時雨蛤は活貝の手剥きが基本だが、手剥きでないものならより安価に求めることができる。
時雨蛤は大粒なうえ、かなり濃い味に仕上げてあるため、小さく刻んでお茶漬けにして食べるのが最もポピュラーな食べ方。そのほか、炊き込みご飯やおにぎりの具や和え物など、工夫次第で色々な料理に使える。
ここでは「貝新」を名乗る時雨屋ばかりを紹介するが、この他、貝繁、貝増、貝藤など時雨専門店は桑名市内に多数あるので、町を散策がてら、お気に入りを見つけてみてはいかがだろうか。
(料理、各店商品の写真はクリックすると大きくなります)
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総本家 貝新 新七商店
土産: 志ぐれ蛤(1365円/100g)他
住所: 三重県桑名市有楽町57
電話: 0594-22-0440
URL: http://www.kaishin7.co.jp/
コメント: 元禄元年 (1688)以来、桑名藩御用(創業は
それ以前から)。初代は伊藤新七。現社長・
伊藤新滋氏は十代目。今回掲載している4軒
中、最も醤油味が強くきいていた。
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總本家 貝新 新左衛門 コメント: 元禄・宝永年間(1688~1710)創業。
土産: 志ぐれ蛤 (角箱、曲物3000円~)他 初代が貝屋新左衛門であったため、
住所: 三重県桑名市小貝須1555 「貝新」の屋号が生まれた。平成11
電話: 0594-22-0304 年に水谷敏也氏が十一代目水谷新
URL: http://www.kuwana.ne.jp/kaishin/ 左衛門を襲名。桑名駅前の開発に
伴い郊外 に移転。土産物店などな
どでの小売が中心。
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総本家 貝新 水谷新九郎商店
土産: 手むき時雨蛤(2625円/100g)他
住所: 三重県桑名市有楽町41
電話: 0594-22-2625
URL: http://www.kaishin-shinkurou.co.jp/
コメント: 享保年間(1716~1735)創業。現当主の
水谷史氏は十一代目。本ページで掲載
の4軒中、グラムあたりの値段は最高額。
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総本家 新之助 貝新
土産: 時雨蛤(1575円/81g)他
住所: 三重県桑名市南魚町60
電話: 0594-22-3535
URL: http://www.kaishin.co.jp/
コメント: 江戸時代 の創業(昭和27年に会社設立)。
現当主の水谷新平氏で十二代目。あっさり
目の「若炊き蛤」 (1575円/81g)も人気。
出版業界にはここの贔屓が多いよう。写真
は自社経営の桑名グリーンホテル内にあ
る名駅前店。
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