和菓子街道 東海道 小田原 小田原メダカの話

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小田原メダカの話

 小田原のとある蕎麦屋を訪れた時のこと。会計を済ませて店を出ようとしたところ、玄関近くに置かれた水槽に目を奪われた。メダカが泳いでいる。水槽の前には、「小田原めだか」の木札。日ごろは食べられる魚にしか興味がない拙子であるが、メダカの上に「小田原」の文字が気になり、店員に尋ねてみた。すると、

「このメダカは市役所に申請して分けてもらったものです。いわば里親制度ですね」

との返事が。なぬ、メダカの里親制度!? これは聞き捨てならぬと、さっそく小田原市役所に向かった。

 市役所に入ると、広いロビーの一角にでんと据えられた大きな水槽。中で泳いでいるのは「市の魚(淡水)」のメダカ。体調3cmほどの小田原メダカは、光の加減によっては白っぽくも黄色っぽくも見えるシルバー色。大きな目とつんと尖った鼻がなんとも愛らしい。

 ちなみに、小田原メダカのオスは尻びれが大きく、尻びれと背びれの後部に切れ込みがあり、メスは尻びれが小さい。…というけれど、実際に見分けるのはなかなか難しい。

 ご存知の通り、メダカは現在、全国的に減少の傾向にあり、環境省により「絶滅危惧種b」に指定されている。ここ神奈川県でも放流により系統が混じってしまっていることも少なくない。

 そんな中、酒匂川水域の農業用水路の一部には、他系統との交配のない小田原固有のメダカが昔と変わらず泳いでいる。神奈川県下では、自然環境で小田原メダカが生息しているのはこの地域だけ。県水産総合研究所の調査により、この水域のメダカの遺伝子は純粋に保たれていることが判明している。

 そんな貴重な在来メダカを保護すべく、小田原市では平成11年から「メダカのお父さんお母さん制度」を実施。年1回、1世帯辺り5匹ほどの小田原メダカを希望者に配り、1年後に増えた分を回収。今年7月までに約840世帯が里親の名乗りを上げている。

「育て方が上手な人からは、1年後に200匹ものメダカを回収することができます」とは、小田原市環境保護課の和田芳廣さんの談。なるほど、これならメダカの保護になるし、市民の環境全体への意識も高まるというもの。

また、小田原メダカの「禁じ手」は、

(1)地域のメダカ(ヒメダカ含む)と混ぜない。

(2)他地域のメダカの近く(隣合わせの水槽など)で飼わない。

(3)川や池などに放流しない。

 いずれも、純粋な遺伝子を残すための配慮である。この制度は市の事業であるため、里親は市民限定。しかし、こういった系統重視の保護活動が各地でも見直されることを、少なからず希望する。

 ところで、かの童謡「めだかの学校」の故郷は小田原である。詩人の茶木滋が、市内の荻窪用水で泳ぐメダカを見て作った歌なのだ。荻窪用水では現在、他団体がメダカを放流している。♪そっとのぞいてみてごらん~と誘われるままに覗いてみたら……!

 放流が行われている荻窪用水で見つけたのは、なんと、観賞用のヒメダカだった。メダカに限らず、魚の放流は各地で行われているが、その結果、地域の純粋な系統が途絶えてしまうこともしばしば…。

(右の写真は全て、クリックすると大きくなります)

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蕎麦屋で見つけた小田原メダカの水槽。赤く見えるのはおもちゃの魚。
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これが純粋系統の遺伝子を持つ小田原メダカ。
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オスとメスの見分け方。
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自然の中で純粋系統の小田原メダカが悠々と泳ぐ酒匂川水域の用水路。小田原メダカをこっそりと獲りに来る輩も少なくなく、それで問題になった過去も。(生息地の特定は避けさせて頂きます)
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用水路を覗いてみると、そこはまさに「メダカの学校」。
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小田原市内の荻窪用水は、♪めだかの学校は川の中~でお馴染みの童謡「めだかの学校」発祥の地。公園として整備されており、水車小屋やちょっとした散策コースもある。
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放流が行われている荻窪用水で泳いでいたのは観賞用のヒメダカだった。