道路を挟んで玉吉のすぐ隣にあるお焼屋も、やはり玉吉同様、幕末からこの地に店を構える老舗和菓子屋だ。慶応元年(1865)の創業当初は茶店で、へんば餅(三重県小俣)のような丸い焼餅を売っていたため、「お焼屋」と呼ばれるようになったのだという。今は和菓子中心の菓子屋として商いをしており、現当主は四代目の草深利之さん。五代目も当店専務として活躍している。
そんなお焼屋の現代の代表銘菓は、「地上の星」。ラム酒に一晩漬け込んだレーズンを混ぜた白餡入りの焼饅頭を、ホワイトチョコレートでコーティングした和洋折衷菓子で、「どこにもないオリジナルな銘菓を創りたい!」という四代目の熱い思いから生まれた。一見、洋菓子のように見えるが、一番のこだわりは中のミルク入り白餡だそう。何度となく試作を繰り返してきた白餡こそ、この菓子独特のしっとり感のミソなのだという。香ばしい皮と餡、富貴な香りのラムレーズンが一体となって、やわらかく、しっとり、やさしい味わいを作り出している。
「地上の星」とは別に、お焼屋の新顔として人気を博しているのが、平成19年生まれの「びっくり大福」だ。餅の中に餡以外のものを詰めた大福は最近では各地でよく見かけるが、お焼屋のものは、丸ごとの苺と丸ごとの栗に加え、クリームチーズが入っている。生クリーム入りは多いが、クリームチーズ入りはちょっと珍しい。何より、個性的な中身に頼っていない点が好感が持てる。餅もふんわりと柔らかく、粒餡もクリームチーズや苺、栗に負けじとしっかりと甘さをアピールしている。中身が中身だけに、重量もあり、食べ応えも満点だ。これを買って帰ると家庭内での点数が上がるとかで、お父さん方も喜んで買っていくのだとか。
新しい「地上の星」や「びっくり大福」に対して、お焼屋のロングセラーとなっているのが「津の俵牛」。「俵牛」とは、俵を背に乗せた牛の形をした土鈴で、明治中頃から盛んに作られるようになった郷土玩具のこと。俵牛は縁起物として全国各地で作られており、特に愛知県の「熱田俵牛」や京都府の「伏見俵牛」などが有名である。「伊勢津俵牛」は津観音の縁日などで売られ、土産物として人気も高かったが、現在では作り手がおらず、途絶えてしまっている。
(扉写真は、お焼屋所蔵の俵牛土鈴)
この縁起物を模ったのがお焼屋の「津の俵牛」で、求肥と粒餡入りの最中だ。ころころとした大粒の小豆は存在感があり、その中に舌触り滑らかな求肥が埋もれている。さほど大きな最中には見えないが食べ応えはかなりある。津の俵牛が姿を消した後も、この最中が俵牛の思い出を伝えていってくれているようで、頼もしい。
最後にもうひとつ、お焼屋を代表する菓子を紹介しておきたい。その名も「相傳 塩羊羹」。10cm×5.5cmほどという小ささながら、1棹630円というお値段。それだけ、味に自信があるということだが、一口頂けば充分納得がいく。塩羊羹の独特な香りながら、味はほとんど塩を感じさせないさっぱりとしたもので、後からコクが追ってくるよう。軽い口当たりと滑らかな舌触りが非常に上品だ。
「相傳」というからには、初代の頃から作っている羊羹かと思いきや、そうではなかった。この羊羹が生まれたのは、今からほんの5年ほど前のこと(2009年現在)。先代(三代目)がそろそろ四代目に店を任せようと考えていた時、何か特別な菓子を一緒に託そうと思考を巡らせて辿り着いたのが、「相傳 塩羊羹」なのである。つまり、「相傳」という言葉には、「この菓子を誇り、末永く伝えていくように」という先代の想いが込められているのだ。
追伸:お焼屋の「けいらん」については、「玉吉餅店」のページ内での「けいらん」に関する考察で触れているので、ご参照されたし。
(お菓子の写真をクリックすると大きくなります)
店舗情報
お焼屋
菓子: けいらん(1個126円)、津の俵牛(1個189円)、びっくり大福(1個325円)、地上の星(1個95円)、相傳 塩羊羹(1本630円)
住所: 三重県津市大門24-1
電話: 059-228-4897
営業時間: 9:00~19:00
定休日: 火曜日
URL: http://www.chijounohoshi.net/
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