津うなぎ紀行
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知る人ぞ知る鰻激戦区、三重県津市。平成17年度の調査によると、1食の鰻蒲焼に対する平均出費金額は1位:津・2150円、2位:大阪・1968円、3位:京都・1959円と、ひとり当たりの鰻消費額は津が日本一(全国平均は1249円)。単位人口当たりの鰻屋密度も全国一高く、まさに一大鰻大国なのだ。 |
いずれにしても、明治以降、徐々に養鰻場が増えていき、昭和初期には津の養鰻業は最盛期を迎えたといわれている(ちなみに、養鰻が最初に試みられたのは明治12年・東京深川)。しかし、昭和34年に東海地方を襲った伊勢湾台風で、津の養鰻場はことごとく流されてしまった。 | |||||
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新玉亭
料理: うな丼(吸物付き、小945円~)、特上丼(吸物付き、1890円)
並かばやき(945円)、白長焼き(1365円)、ミニ丼セット(945円)他
※各種うな丼メニューは+105円で中盛り、+210円で大盛りに変更可能。
住所: 三重県津市丸之内養正町5-1
電話: 059-224-0008
営業時間: 平日 11:00~14:00、16:00~20:00
土日祝 11:00~20:00
定休日: 月曜日
URL: http://www.shintamatei.co.jp/
四天王寺のすぐ近くにある川糖屋菓子舗は、創業明治5年(1872)。高田本山の御用菓子屋でもあり、地元では名の通った菓子屋だ。元は川戸屋と名乗っていたが、後に砂糖を使う商売ということで、「戸」の字の代わりに「糖」を当てるようになったという。漢字が変わってからも店名の読みは変わらず、「カワトヤ」だ。ちなみに、初代の名前は渋谷平五郎。元の苗字が川戸だったが、結婚して妻の渋谷姓になった。
川糖屋は、元は伊勢街道に面して店を構えていたが、近年の周辺の土地開発に併せて創業以来の商いしていた明治の建物を取り壊して店舗を建て直した。更にその際、店の表裏も入れ替えて、正面が23号線に面するようにし、裏口が伊勢街道側にくるようにした。そのため、今でこそ伊勢街道に背を向けて立っているが、昔は街道を行く人々を相手に商売をしていた店なのだ。
街道沿いの和菓子屋とはいえ、明治に入ってから始めた店だけあって、当時からハイカラなものを多く扱っていたようだ。例えば、カステラ。初代の頃からの人気商品という川糖屋の「かすてい羅」は、今も健在だ。
津城址の北側に、4階建ての大きなビルを構える新玉亭は、鰻の街、津でその名を馳せている老舗鰻料理店だ。創業は明治23年(1890)、現当主で四代目を数える。大勢いる職人の中には、35年以上も新玉亭で鰻を焼いている人もいるそうで、安定した味の鰻料理を出すことで評判がいい。
大店舗で客入りが多いせいか、はたまた注文を受けてから仕込みを始めるためか、注文後、待つこと1時間以上。その間、周囲の人々が旨そうに口に運ぶ鰻を物欲しげに見ながら辛抱強く待たねばならない。
新玉亭には妹夫妻と共に3人で店を訪れたため、「白長焼き」「かばやき」「うな丼」という3種類の料理を頼むことができた。かばやきは3切で945円~と、かなりお手頃。愛知県の一色や宮崎県などの産地から仕入れる鰻は、しっかりと焼かれており、焦げ目がカリカリするほど。ばりっとした皮の下には、脂がのってふっくらとした濃厚な鰻の肉。関西風で、腹開き、蒸しを入れず直火焼きにしているため、脂もこってりと残っている。この鰻の味そのものを存分に楽しめるのが、白長焼きだ。白焼きの定番である山葵はなく、ポン酢にネギ、大根おろし、しょうがといった薬味が添えられている。きりっとしたポン酢が鰻の脂を程よく落としてくれて、さっぱりと頂くことができる。酒のつまみにも最適だ。
これにタレをつけて焼いたのが、かばやき。濃厚な伊勢だまりで作るタレはコクがあり、かなり甘濃いお味だ。濃いけれど、後味は意外とスッキリしており、鰻の味もしっかり伝わる。うな丼の場合、御飯にもしっかりとタレをまぶしてあるため、やや汁だく気味。白い御飯と一緒に食べたいという人は、「う御飯」の方を頼んだ方が得策だ。ちなみに、新玉亭では鰻重というメニューはなく、ご飯の上に鰻をのせたものは「うな丼」、ご飯と鰻を別々にしたもの(それぞれお重入り)を「う御飯」としている。
ところで、うな丼、うな丼と書いてきたが、実は今回頼んだのは、通常のうな丼ではなく、いわゆる「チャレンジメニュー」だ。新玉亭では、各種うな丼料金に105円増しで中盛り、210円増しで大盛りに変更することができる。中でも、鰻5切(1尾+1切分)の特上丼+210円は、たびたびテレビや雑誌でも取り上げられる特盛り丼だ。これは、チャレンジしないわけにはいかないだろう。
写真などで見知っていたけれど、実際に運ばれてきたものを目の前にすると、やはりしり込みする。丼の蓋がはまらない、どころの話ではない。基本的に+210円というのはご飯の値段で、鰻の量が増えるわけではない。ご飯は崩れないようしっかりと押し付けて圧縮してあるため、見た目以上のボリューム。その量、実に丼3杯分、約1300グラムというから驚きだ。使っているお米はもちろん、コシヒカリ。鰻はご飯の上には乗り切らないので、途中で中に残りを挟んである。こうでもしてもらわないと、ご飯だけひたすら食べるハメになる。
…数十分後。凄い、凄い!といいながら、結局、完食した。いや、私が凄いのではなく、このメニューを注文する人の7割は完食するというので、平均的と思って頂きたい。チャレンジメニューに惹かれて訪れた店ではあるが、鰻そのものは充分美味しかったので、また訪れたいと思う。今度は、並丼で…。
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はし家
料理: うなぎ丼(吸物付、小945円~)、特上うなぎ丼(吸物付1575円)
中う御飯(吸物付1155円)、小蒲焼き(945円)他
住所: 三重県津市大門4-10
電話: 059-228-4925
営業時間: 11:00~20:30 (2階座敷は14:30~16:30は中休み)
定休日: 月曜日 (火曜日になることも。事前確認をお勧めします)
URL: http://www.anotsu.net/hashiya/
津市内を東西に走るフェニックス通りから少し北側に入った辺りにあるはし家は、新玉亭と双璧を成すと称される人気鰻料理店だ。新玉亭のタレが甘めなのに対し、はし家のタレは辛め。津の鰻らしい味といえば、むしろ、はし家の味をいう人が多いかもしれない。
はし家の蒲焼は腹開き、蒸しなしの関西風。もちろん、使用する炭は備長炭だ。肉厚な鰻は、中はふっくら、外はカリッと香ばしく焼き上がっている。柔らかな鰻の肉に箸を入れると、脂がじゅわっと沁み出て、ご飯に絡まる。これがまた、旨いのだ。タレは醤油が強めで、辛口。べたつかず、さっぱりしている。ご飯と鰻、タレの量はそれぞれバランスがよく、理想的なうな丼といえる。惜しむらくは、卓上の山椒がS&Bのそれだったことか。
噂では、丼を注文すると食後にコーヒーゼリーが出されると聞いていたが、訪れた日は津祭当日で店が多忙を極めていたせいか、残念ながらゼリーは頂けなかった。なぜコーヒーゼリーなのかも、謎のままだ。
また、お忙しいところ、店の方から無理矢理お話をお伺いしたところ、創業は60年ほど前で、現在三代目という。なんだかよく分からない計算だが、そういうこともあるのだろうか。ただ、ご当主は津のうなぎ専門店組合」の会長を務めていらっしゃるとのこと。同業者の仲間内でも信頼されている店のようだ。
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大観亭支店 栄町本店
料理: うなぎ丼(1050円~)、お化け丼(4200円)、ひつまぶし(1575円~)、ハーフ丼(蒲焼&肝焼き丼1680円)他
住所: 三重県津市栄町2-472
電話: 0120-25-3445、059-225-3445
営業時間: 11:00~20:00
定休日: 土曜日 (営業することもあるので、事前確認をお勧めします)
大観亭支店栄町本店。支店なのか本店なのかよく分からない名前の店だが、数ある津市内の鰻料理店の中でも、上位に入る人気店だ。元々、大観亭という店が津市内にあり、戦後の昭和22年にその支店として開業。そのため、「支店」を名乗っているが、その後、本店の方がなくなってしまった。更に、支店だったこの栄町の店から兄弟が独立して、西口店や渋見店が生まれたため、今では本店になった。これが、不思議な名前の由来である。
この店で使用する鰻は、愛知県一色産のブランド鰻「鰻咲」。ニンニクやアミエビなどを練り込んだ餌を食べて、矢作川の天然水で育った鰻で、全国的にもシェアの多い一色産鰻の中でも、トップクラスの品質を誇る。ただでさえ味のよい鰻を、じっくり炭火で焼いていく。大観亭では蒸しは入れないが、背開きにしているため、関東風と関西風の中間といえる。
客席からは台所が丸見えだ。前日に白焼きしておいて冷蔵している鰻店は多いが、こちらはそんなことは決してなく、生から鰻を焼いている様子がよく分かる。皮から脂がぷつぷつと弾けてきたら、タレ壷に鰻を入れる。再び炭で焼き、もう一度ぷつぷつしてきたら、二度目の色づけ(タレに潜らせる)。タレをつけて焼くタイミングが早すぎると鰻の臭みが残ってしまうし、焼けすぎては焦げ臭くなる。大元の本店のあった時代から受け継がれてきたというタレは甘め。甘露煮にも近いような濃い味付けだ。
熟練の職人だけが知る、絶妙なタイミングで焼き上げた鰻は、肉厚とは言い難いが、カリカリっとしていて、香ばしい。水分をかなり飛ばして焼いているようだ。今回は残念ながら注文しなかったが、この店のひつまぶしの評判がいいのは、カリカリっとしたこの焼き方のせいだろう。蒲焼や丼、うな重よりも、ひつまぶしの方が本領を発揮できるかもしれない。
この店の名物としては、上記のひつまぶしの他、「お化け丼」や「ハーフ丼」もある。「お化け丼」とは凄い名前だが、出てきたものを見れば納得がいく。顔よりも二周りも大きい椀にまず驚く。蓋を開けると、ぎっしりと敷き詰められた柔らかめのご飯の上に、鰻丸々3尾がのせられているではないか。鰻は脂をしっかり飛ばして焼いてあるため、3尾食べてもくどさが残らない。
「ハーフ丼」はというと、これまた個性的なメニューで、蒲焼と肝焼きを半分ずつご飯にのせた丼だ。鰻は2切れと少なめだが、肝はたっぷり。肝焼き好きにはたまらない(ただし、添えられるお吸物は肝吸ではない)。
ちなみに、三代目(大元本店から数えて)高崎一郎さんは、詩人としての顔も併せ持つ人物。これまでに6冊もの詩集を自費出版している。現在は四代目である息子さんに店を任せて、念願だった詩三昧の日々を送っているのだとか。「ただ、店に立つことで自分自身の人生経験にもなるので、もう少しここにいたい」と、はにかみながら語る姿が印象的だった。
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つたやう料理店
料理: 石焼ひつまぶし(2100円)、うなぎ丼(並950円~)、うなぎごはん(中1160円~)
住所: 三重県津市東丸之内22-9
電話: 059-228-3005
営業時間: 11:00~21:00
定休日: 火曜日
創業明治8年(1875)のつたやは、現在営業している津市内の鰻料理店の中でも最も古い店の一軒だ。現当主の森さんで四代目を数える。駐車場の上が店舗になっているが、外壁には隆々とした緑の蔦が絡まっている。これが店名の由来かと思いきや、そうではないらしい。
もっとシンプルに、明治時代に蔦町と呼ばれていた町にあるから“つたや”なのだという。それが具合よく、つたの絡まる店になってくれて、つたは店のちょっとしたシンボルになっている。ただ、あまりつたの葉が多すぎても近所迷惑になるとかで、以前よりもだいぶ剪定してしまったため、一頃よりも緑は少なくなってしまったのだそう。
つたやの名物鰻料理はというと、「石焼ひつまぶし」。鰻料理店の多い津の中でも、この料理を出しているのは恐らくこの店だけではないだろうか。メニューにも載っていない上、石焼用の石焼鍋を、ゆっくり、じっくり、充分に熱しなければならないため、遅くとも1時間前までに予約しておかなければありつけない料理だ。
熱々で、バチバチとご飯やらタレやらが焼ける賑やかな音を立てながら運ばれてきたそれは、湯気と共に実に香ばしい香りを漂わせている。料理の内容はというと、文字通り石焼ビビンバ風。石焼鍋にご飯、タレ、小口切りにしたネギを入れて混ぜ合わせ、その上に炭火で香ばしく焼き上げて色づけした鰻を敷き詰める。白いご飯の上にそのまま鰻を乗せてタレをかけてしまうと、タレが器の底に溜まってこげてしまうため、あらかじめご飯とタレを混ぜ合わせておくのだそう。
食べ方も、石焼ビビンバ風だ。まずはそのままを頂く。この店の通常のうなぎ丼は、こってりと脂の乗った肉厚の鰻が、コクのある甘辛のタレでしっかりと色づけされている。それに対して、石焼ひつまぶしの蒲焼はよりしっかりめに焼いてあるようで、脂っこさもない。パリパリに焼けた鰻が香ばしく、タレも甘さ控えめで、醤油がきりりと強くきいている。
次に、ネギ、摺り胡麻、海苔、山葵などの薬味をのせて。更には山芋のとろろ汁をかけて。そして、最後には昆布のきいた出汁をかけてお茶漬け風に。もちろん、とろろ汁や出汁をかけたものに薬味を加えてもいいし、とろろ汁と出汁を併せてもおいしい。とろろ汁にもしっかりと味がついているため、ご飯には丁度いい。出汁は上品な薄味で、こちらは締めにぴったりだ。
おこげも捨て難い。これには、予約厳守の意味が充分生きてくる。急いで石焼鍋を焼いてしまうとご飯が焦げすぎてしまうし、焼き方が浅いと、ご飯が鍋にくっついてしまう。程よく焼けたご飯に薄味の出汁をかけるだけで、充分贅沢な味わいになる。色よく、香ばしく、ばりばりとした食感のおこげも、この料理の大事な役回りなのだ。
肝吸いは香りの良いかつお出汁で、石焼ひつまぶしようの昆布出汁とはきちんと分けている。こういったちょっとした心遣いが小憎い。色々な食べ方を用意しているせいか、量はかなり多めだ。ご飯は通常の丼1杯よりも多めで、鰻も1.5尾分はある。食べ応え満点で、男性にも嬉しい料理ではないだろうか。
様々な楽しみ方ができるのは、石焼ビビンバやひつまぶし以上。ちなみに、筆者自身は石焼ひつまぶしもとろろをかけるひつまぶしも賞味したことがあるが、この両方を組み合わせた店はこのつたやが初めて。目から鱗だった。なるほど、考えたものだと、感心した次第である。
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両口屋
料理: 平日数量限定ランチ(1260円)、うなぎ御膳(2625円~)、ひつまぶし(きも吸い付、2100円) 、うな丼/うな重(きも吸い付、梅1365円~)
うなぎ会席(御座敷、要予約、4200円~)
住所: 三重県津市岩田6-26
電話: 059-228-3240
営業時間: 11:00~14:00 (L.O.13:30)、17:00~21:00 (L.O.20:00)
定休日: 日曜日、祝日
URL: http://www.tsu-ryoguchiya.com/
元は養鰻業を営んでいたが、昭和6年、鰻割烹料亭として改めて出発した。養鰻業時代から数えると、現当主の水谷良平さんで四代目になるという。庶民的な鰻料理店の多い津にあって、両口屋は割烹らしく、店内の内装にもキメ細やかな配慮が伺える。
料理も、鰻と旬の食材を使った4200円~6300円の「うなぎ会席」などもあり、なかなか敷居が高い印象がある。しかし、「ひつまぶし」や手軽なうな丼/うな重など、手ごろなメニューもあるので、さほど気後れすることなく訪れることができる。平日昼時ともなると、スーツ姿の男性客で賑わう。
今回頂いたのは、「平日数量限定ランチ」。数に限りがあるということで、開店に合わせて店に入ったが、これは正解だった。食事を終えて店を出る頃には、カウンター席(ポケットグリル「津よ志」)はもちろん、座敷も全て埋まってしまっていたから。
限定ランチの内容は、先付・ミニう柳川・蒲焼・うざく・御飯・吸物・香の物で、少量ずつが一膳になっている。この日の先付は、御飯のお供にもお酒のアテにもぴったりの鰻の時雨煮だった。蒲焼は、カリッと香ばしく焼けている。初代の頃から注ぎ足して使っているという家伝のタレは甘すぎず、辛すぎず。後味がしつこくなく、鰻の旨みを充分に引き出している。牛蒡と鰻を玉子でとじた柳川は、酒がよくきいていて、贅沢な味わい。総じて、味も量も上品で、女性には特にお薦めしたいランチだ。
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川治
料理: 川治幕の内(1590円)、うなぎ丼(並・肝吸い付940円~)、ランチサービス(うなぎ丼・そば付(940円)、櫃まぶし(1990円)
住所: 三重県津市南中央16-12
電話: 059-226-6482
営業時間: 11:00~20:30
定休日: 火曜日 (祝日の場合は翌水曜日)
伊勢街道沿い、上弁財に入る手前の国道23号線バイパスに面して建つ川治。元は他形態の飲食店だったが、社長の鰻好きが高じて、鰻料理店にに鞍替えした。昼時を過ぎてもひっきりなしに客が来店するのは、昼と夜の間の中休みがないためばかりではない。外見は喫茶店風ながら、他店からも足しげく通う常連がいるほど、評判の高い店なのだ。
メニューは少なめで、うなぎ丼(並~特上)が中心。そんな中でも今回お薦めしたいのは、店の名前を冠した「川治幕の内」だ。蒲焼にう巻き、うざくがひとつの膳に会する弁当で、肝吸い付き。自慢の蒲焼は、甘さ控えめのタレで、醤油がきりっときいており、あっさりめ。肉厚で、脂もたっぷりのっていて、ぷっくりとした身に「鰻を食べている」感を実感することができる。焼く際に身から落ちる脂の作用もあるためか、皮はしっかり焦げ目がついていて、パリパリだ。
これだけ頂くだけで充分満足できるが、他の小料理もいずれも手抜かりない。大きな鰻巻きはふわっふわの仕上がり。弁当とはいえ注文が入ってから作っているようで、熱々だ。箸を入れると断面からじゅわっと出汁が流れ出てくるので、急いで口に運ぶ。すると、しっかりときいた出汁と柔らかい玉子、旨みのある蒲焼がひとつになって舌の上に広がる。甘めの酢でもんだきゅうりとワカメの上に、ざく切りにした蒲焼を散らしたうざくは、きゅうりのパリパリ感と鰻のカリカリ感が一緒になって、歯ごたえでも楽しめる。肝吸いの肝もきれいに処理されており、ぷるんとしていて、ほろ苦さが旨みを増している。単なる鰻尽くしではなく、実に贅沢な鰻尽くし弁当である。
この他、うなぎ丼とそばがセットになった平日11時から14時までの「ランチサービス」や「櫃まぶし」も人気。
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いとう
料理: 上丼(850円)、極(スペシャル)丼(1600円)他
住所: 三重県津市丸之内1-3
電話: 059-229-1790
営業時間: 11:00~19:00
定休日: 不定休
鰻激戦区の津市街地で、穴場と評判の店がある。岩田橋北岸の通りに、居酒屋などに紛れて商いをするいとうだ。10年ほど前に開業したばかりで、まだまだ存在こそ穴場的ではあるが、ご主人と手伝いの女性のインパクトがあまりに強烈で、ある意味、不思議な店として知られた存在になりつつある。
カウンター6席、かろうじて空いたスペースに置かれた4人がけのテーブル席だけの小さな店で、まるでラーメン屋みたいな風体だ。閉店の1時間ほど前に店を訪れたが、ご主人がなにやらいそいそと、出かける準備をしている。「閉店ですか?」と尋ねると、「いや、これから出前なんだよ」とご主人。一旦、言葉を切ったが、すぐに続けて、
「あのさぁ、出前してくるから、ちょっと店番しててくれる?」
ちょっとビックリ。イヤともいえず了解すると、「いやぁ、常連さんだったら出前の方を頼んじゃうんだけどね(笑)。じゃ、行ってくっから」そういい残して、さっさと店を出てしまった。ぽつんとひとり、カウンターでお待ち申し上げる。
しかし、ご主人は思いのほか早く戻ってきてくれて、ちょっとほっとした。近くの市役所まで持って行ったのだという。すっかり打ち解けてしまうと、このご主人、しゃべる、しゃべる。とにかく、初めて会ったとは思えないほどの勢いだ。50歳で脱サラし、我流で鰻屋を始めたというご自身の経歴から、変わり者と評判の看板娘をこの店で雇うようになった経緯、テレビで紹介された時の撮影エピソードまで、ありとあらゆる話が出てくる。
忘れないうちに注文しなくちゃと、はたと思い出し、蒲焼と肝焼をお願いした。この日は鰻屋を梯子していたため、ご飯はもう食べられないと思ったのだ。するとご主人、「肝焼かぁ。本来はひとつの鰻にひとつしか肝がないから、普通はやらないんだよね」という。肝焼は、極(スペシャル)丼につける肝吸いのためにいつもよけて取ってあるのだそう。それならばと諦めかけると、「でも、いいや。今日はもうあんたで店仕舞いにするから、残ってる鰻を全部さばいてやるよ」と、なんとも太っ腹なことをおっしゃってくれた。
更には、「姉ちゃん、鰻焼くのなんか見たことないだろ?見せてやっから、入りな」と、厨房に入れてくれた。これまで、仕事で鰻を焼くところを何度も見てきたが、裁くのをナマで見るのは確かに初めてだ。狭い厨房に入ると、ご主人が桶に入った鰻を見せてくれた。いとうでは注文が入ってから鰻を裁くところから始める。極丼では食べる人が自分で鰻を選ぶことができるというが、この日は残った5尾を全部裁いてくれるという。背がキレイに青トビした、一色産の鰻だ。
「こんなへたくそな裁き方するヤツは他にいないよ。俺は全部我流だから」そういいながらも、さっさと、慣れた手つきで裁いていく。
「うちはどっちかっていうと、京都風なんだ。酒をふりかけて白焼きにして、一度、水にさっと潜らせる。それからまた酒をかけて焼く。これが京都風。こうするとパリパリだけど濃厚、かつ臭みのないぷりぷりの鰻に仕上がるんだ。ただ焼いてるだけだと、水分が抜けきっちゃうからね、適度に水分補給をしてやるんだよ」
蒸しは入れないけれど、蒸したようなふっくらさが出て、しかも皮はパリパリになるのだ。そうして焼いた鰻を、醤油、みりん、砂糖のみで仕込むタレを潜らせる。材料は全て無添加の安全なものだけを使っているという。出来上がったタレは甘ったるくもなく、しょっぱすぎず、程よい味わいだ。
炭がバチバチと音を立てて弾けるのを聞いていると、さっきまでお腹一杯だったのに、急にお腹が減ってくるから不思議だ。こんなことなら、うな丼にすればよかった。鰻が焼き上がり、席に戻ると、実にタイミングよく若い男性が3人連れで来店。鰻は丁度よく売り切れて、しかも私と相棒は肝を5匹分を頂くことができたのだった。ご主人はもしかしたら、3人連れがやってくるのを知っていたのかな?よくわからないが、今度こそ満腹になって、お礼をいって店を出たのだった。
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藤屋
料理: 並うなぎ丼(1050円)、並うなぎ定食(1260円)、中うなぎ定食(1680円)、うなぎ柳川定食(990円)他
住所: 三重県津市新東町128
電話: 059-226-2535
営業時間: 11:00~14:00、17:00~20:00
定休日: 水曜日
創業は今から120年ほど前の明治中ごろ。津の鰻料理店としては5本の指に入る老舗で、現在は四代目と五代目が供に厨房を預かり、接客は四代目の大女将が中心になって行っている。店内の雰囲気はどちらかというと食堂風だが、実際、メニューも様々なタイプの定食を取り揃えており、うな丼やうな重以外にもあれこれ食べたいという人がこの店を多く利用するようだ。
鰻の蒲焼を卵とじにしたうなぎ柳川がメインになった定食も魅力的だったが、この日はう巻き、八幡巻き、うざく、蒲焼、吸物のつく「中うなぎ定食」に決めた。う巻きなどの惣菜類や蒲焼はある程度作り置きしてあるようで、注文してから程なくして料理一色を載せた盆が目の前に置かれた。
鰻は柔らかいが、辛めのタレが肉にまでしっかりと染み入っていて、全体的にかなり濃い味になっている。あっさりとしたタレという前評判を聞いていたが、この日だけなのか味覚の違いか、私には濃く感じられた。白いご飯が別盛りになった定食でよかったと思う。
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